リセット
」のレビュー

リセット

谷崎泉/奈良千春

お父さんのこと苦手なんだね。どうして?

ネタバレ
2024年11月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 谷崎泉先生の本、貪り読んでます。この先生面白い!と思ったのは、願い事は口にしないが最初なんですけど、その時に抱いた感想と似た感じ。この先生は、絶対に先生の中で決まってる設定があるはずなんですけど、本編の中で明かさないんですよ。じゃあ、どーじんしで続き書いてくれてるのか?っていうとそうでもないんですよ。真音の富樫さんはなんで両親と兄殺したのかとか、ファーストエッグの高御堂さんはどうやって父親を殺したのかとか、佐竹の本当の能力とか。この作品でいうと、なんで橘田さんは自分の父親のこと苦手なのか、っていうのが最後まで読んでも明かされません。母親があんな悲惨な形で亡くなって、父親に対して負目があって顔向け出来ないんだ、という口調じゃないんですよね。本当に父親が苦手な理由が何かあって、口がきけない人なんだと思われてもいいから父とは会話したくない何かがあったはずなんですけど、わからないままおわります。でも父親は子供のためにカウンセラーを見つけてきたりして、父らしい行いはされている。再婚した時も、自分の息子には、無理に喋らせずにつつがなく再婚相手の家族と過ごす。…なんか歪です。なんかあるはずなんです。この先生に原稿用紙のサイズ気にせず物語を書いて欲しいものです。でも、この謎部分が癖になるというか、想像の余地があり、とても面白いと私は思います。この作品には2人の攻めが出てきますが、なんかもう、ここまできたら、BLだの攻めだの受けだの関係なく、登場人物たちの関係性に感じ入る思いです。あまりにも相手の特別になると、関係性に名前をつけられなくなってしまうような、そんなお話なんです。読者はおそらく二度打ちのめされるでしょう。高平さんが別れを告げられた時、身を切られるような思いを味わいましたが、ここでおわりじゃありません。しかも、倉橋さんはとても良い人で、それが文面からも伝わってくるからこそ、2度目の別れはより耐え難い。でも、最後には倉橋さんの手を取って2人で幸せになる道を選んでくれるといいな。橘田さんがいつか心からの笑顔で笑って、エッチの時にはうんと甘えてかわいい声聞かせてくれるようになるといい。そんな暮らしができたらいいな。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!