囀る鳥は羽ばたかない
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囀る鳥は羽ばたかない

ヨネダコウ

激情を静かに押さえ込む執着愛に震える

2024年11月14日
任侠舞台ですがドンパチメインのハードボイルド物ではなく、周りの人間関係や事件などの味付けを削ぎ落としてCPだけを見れば、拗らせ繊細華奢美人受けと執着大型忠犬攻めの命がけの無償の愛の純文学。
この作者様の絵柄や作品は神経質そうな乾いた大人の感じで何時も暗めに物静かに時が流れる独特の雰囲気が有るので無性に「あー今日はじっくりヨネダコウ作品が読みたい」と思える個性がいい。
なので、可愛い恋愛物が好きな人にはパンケーキ食べたい気持ちの時にモツ煮が出てきちゃったよ。って感じで楽しくないだろうとは思う。
でもね。一巻の「人間を好きになって孤独を知った。それが男だという絶望」と言うセンテンスと一人で頬を濡らす受けを覚えていて。それを軸に観ると良いと思う。好きだと認める自分が怖い。大切な物が出来るのは怖い。本気は怖い。知らなければもう、傷つかない。失う孤独と辛さはもう嫌だ。
そして攻めは「どうして皆解らないんだろう。あんなに綺麗で一途な人はいない」「あなたの為の命ですから」「どんな形でもいいから側にいたい」ベタ惚れ。
時が過ぎても2人の軸は変わらない。
本気の愛を認めるのが怖い受け。攻めは受けに本気を見せたら逃げられる恐怖。
止めたいのに止まらない想い。抑えられない。
言葉に出して失うのが怖い2人は本音を交わさないまま離れられず。不器用な2人の気持ちが爆発する時には止まらない深い口付けを交わす。何度も何度も。好き好き安売りのフワフワBLより遥かに震える。
極上の大人のトロ甘BLだと思う。
ただ、初見は組と組の人間関係で登場人物が多くて「え?ん?誰だ?」となるので多少面倒。
何度も一気に読み直したい作品。言葉、表情、描かれてなかった部分の絵。伏線回収の度に喉と胸がギュッと熱くなる。
※検索すると腐教者様達が同志の為に人物相関図をあげてくれてます。
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