真夏のユリイカ
」のレビュー

真夏のユリイカ

吾瀬わぎもこ

昭和•地方•リアルに描かれるファンタジー

ネタバレ
2024年12月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1979年、数学を研究する助教授の鵜飼遠は、土岐修一郎という院生と出逢います。逞しく爽やかな土岐に好感を覚える鵜飼でしたが、10年前に恋人を失い、さらにストーカーに狙われやすい鵜飼は、必要以上に人と関わらないようにしているのでした。けれども怪しい学部生に付き纏われてしまい困っているところを土岐が助けてくれます。鵜飼はお礼を兼ねて土岐を食事に誘います。そこで土岐の理解の早さや頭脳の明晰さを知り、ますます土岐に惹かれてゆきます。そしてデザートにクリームソーダを美味しそうに食べる土岐を見て、10年前に土岐と出逢っていたことを思い出すのでした。『アフターグロウ』で北部九州の地方色と博多弁を魅力的に描き出した作者さまの今回の作品には、さらに昭和という時代が加わります。数学一筋の真面目な鵜飼の学生運動に振り回された青春と初恋、心優しい少年との一夏の思い出、突然の恋の終わり、そして10年後の邂逅とが眩しく瑞々しく語られます。服装や生活背景が高い画力で描かれていて昭和という時代がリアルに伝わってきました。そのリアルがBLのファンタジックさをがっちりと支えています。素晴らしい画力はエロシーンにも遺憾無く発揮されていて、昭和っぽい湿度の高さと相俟ってかなり攻めています。攻めの後ろを初めて見ました。
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