イルカの耳骨
」のレビュー

イルカの耳骨

素晴らしくて、胸がいっぱい

ネタバレ
2025年1月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 無欲だと言われる千晃と、常に誰かのために何かしらしている浅見。イルカの耳骨探しという印象的な冒頭からの、見えているようでなかなか見えて来ない、二人の関係。

幸運のお守りだという耳骨探しはバイト先の少年・宝のためで、その宝を含めた千晃と浅見の物語です。何だかとてもきれいなものを見ていたような気分。もっと味わいたくて読み返しても、ページをめくる手が止まってしまう。きっと、ゆっくり咀嚼した方がよい作品なのでしょう。

口数が多いとはいえない千晃の、印象に残る言葉たち。行き過ぎた奉仕は不健全な面があるもので、ありのままでいることへの否定にも繋がります。欲がないと言われる千晃が浅見から受け取るものは、いつでも「役に立つもの」ではなく「嬉しい」もの。痛みすらも心地良いような、不思議な魅力のある作品です。

終盤の海で二人が語るシーンは、美しくて切なくて、何だかもう胸がいっぱい。とても素敵な作品です。おすすめ!
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