雪人 YUKITO
」のレビュー

雪人 YUKITO

大沢在昌/もんでんあきこ

こういうハードボイルド作品を待ってた!

2025年1月14日
10年前に潰れた暴力団のことを聞いて回る謎めいた青年が、欲望の街新宿に波乱を巻き起こすハードボイルドなお話。
原作がハードボイルドの巨匠大沢先生の小説ということもあり、お話の構成や展開、緊張感や疾走感が素晴らしかったです。コミカライズにあたり構成や流れを多少変更したようですが、元々の作品の作りがしっかりしているので最後まで目を離すことが出来ない程夢中で読みました。また、もんでん先生の構成力や画力も素晴らしく、キャラの魅せ方や描き方が作品として完成度が高かったと思います。
内容は雪人が父親の死の真相を知るために秋田と新宿で体を張って真実に近づいていくお話。雪人のマタギの孫としての野生の勘や警官としての正義、人と真っ直ぐ向き合う素直さなどが周りの人を惹きつけ、仲間がどんどん増えていく様は彼のキャラの魅力を存分に表現しています。そしてそれと同時に、ヤクザの世界での仁義やルール、欲望や執着の恐さをストレートに描いていて、これぞハードボイルドの良さであると認識できました。
小説ではハードボイルド作品は一つのジャンルとして確立してますが、漫画ではハードボイルドと呼べる作品はまだ少ないように感じます。重厚な内容になるこのジャンルを分かりやすく漫画として魅せるのは難しいことだと思いますが、だからこその面白さと魅力があるのではないでしょうか。今後、もっと本格派のハードボイルド作品が増えてくれることを期待したいです。
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