雪と墨
」のレビュー

雪と墨

Marita

魂が呼び合う壮大なサイエンスファンタジー

2025年1月16日
転生者の会社員とタイムトラベラーのその従兄弟が織りなす、人生と時をかけたサイエンスファンタジーなお話。
転生者とタイムトラベラー、どちらもファンタジーではよくある設定ですが、各々その性質を持つ主人公が両方同時に存在し、なおかつその二人が魂で惹かれ合う運命の相手であるというこの発想が何よりも斬新で素晴らしいアイデアだと思いました。それぞれのルールや特徴がどうなっているのかを紐解く過程は、同じ性質を持つ仲間たちとの会話で展開させ、各々の生きる意味や目標を模索しながら、普通とは違った運命に翻弄される彼らの生き様をじっくりと見せるストーリーは、重厚でとても深い内容になっていると思います。それと対比するかのように、あっくんとトッキーの日常は穏やかで、彼らのやりとりに日々の小さな幸せを感じられるのも素敵です。
複雑なルールで転生を繰り返す転生者と時をまたぐタイムトラベラー。絡み合った彼らの運命が、ようやく二人の幸せというゴールへ向かうことが出来た時、膨大な時間とたくさんの人生が過ぎりました。その壮大さと、魂が惹かれ合う姿に、感動して涙が止まらなかったです。
そして、お話もとても素晴らしいですが、カラー絵の使い方などもとても上手いなと思いました。各話の表紙だったり、大事な場面でのカラーページは印象的でした。特に最終話のカラーページは、互いの想いや苦悩が辿り着いた幸せのカタチとして、漫画としてだけでなく目に見える物語として大きく羽ばたいた作品の仕上がりになったと感じました。各話に挟まれる4コマ漫画の使い方などの工夫も多く、ストーリーでは収まらない人となりを余すことなく楽しめる作りには感謝と尊敬しかありません。
主題の設定も斬新ですが、細かいところにも作者様のアイデアが光ります。あっくんやトッキーが働く魔訶不思議な会社や、登場人物たちの一風変わった名前など、溢れ出る個性が最高でした。
こんなにも素晴らしい作品なのに、レビュー数が少ないのが本当に残念です。もっと多くの人に読んでもらい、この作品の素晴らしさが伝わればいいなと思います。
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