このレビューはネタバレを含みます▼
町を人を捨てられず、社会の流れに抗い弱者に寄り添う主人公・矢澤が求めた、ささやかな「いいこと」。そこでも騙されマジ猫演じるタマを相手に奮闘する滑稽さと、親切心から突き付けられる現実世界の虚しさ寂しさ。猫と、猫に愛情を傾ける人間としての絆が、二人にとってかけがえの無い救いになればなるほど、纏わりつく不幸が怖くなります。
ネタバレレビューをチラチラと薄目で読みながら、購入するまで何度も機会を見送った作品でした。個人的にはハピエン厨だしヤクザは嫌いだし、食い物にされる弱さも、そうならざるを得ない不幸な境遇も苦手です。
この作品の結末も辛すぎるものでしたが、でも実際に自分の目で読み、受け取ることが出来て良かった。救いのない現実に救いを与えられるのが物語だと思うし、物語を読むからには何かしらの救いを求めたい。だからこそ、沈澱する黒い粒が空から降る光の粒になる瞬間、そこに読者は奇跡を見ると思うのです。
抜け殻となった主人公を立ち直るまで見捨てない、優しくて強かな周囲を見せてくれた最後も良かったです。いやしかし、なんつー物語を作ったんでしょうね、先生。やられました。ぐわー(取り乱し失礼)