このレビューはネタバレを含みます▼
日本で働く日英ハーフのホーキンス柊真は、新たな趣味を開拓しようと本屋で編み物の本を手にします。英人の祖父が編み物をしていたこともあり、パラパラとめくるうちに素敵なデザインとそれをデザインした糸瀬雅巳と出逢います。自力でやろうとするもギブアップした柊真は、著者である糸瀬先生の教室に通い始めます。糸瀬先生は優しく穏やかで柊真のタイプなのですが、結婚指輪にちょっとがっかりします。珍しい男子生徒で英語が堪能なこともあって、柊真と糸瀬先生とはどんどん親しくなってゆきます。ある日、柊真は先生のスタジオで編みかけの片方だけの靴下を見つけます。それは糸瀬先生が亡くなった奥さんのために編んだものでした。亡き妻への感情を胸に抱えたままの糸瀬先生を、柊真が未来に続く明るい世界へ連れ出します。糸瀬先生への恋にウキウキしながらもスパダリっぷりを発揮する柊真、妻にも柊真にもどこまでも真摯に向き合う糸瀬先生、そこに柊真のおじいちゃんの人間味の深さが加わって温かいお話になっています。昨今メジャーな編み物男子ですが、男性の作品には数学的に美しいものが多いように感じます。これから二人はそんな作品をいっぱい生み出してゆくのでしょう。