積木の恋【単行本版】
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積木の恋【単行本版】

黒沢要/凪良ゆう

心が浄化される素晴らしい作品

ネタバレ
2025年3月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み終わった今、色々な感情が渦巻いています。
子供の頃に行った同級生の家。そこでの「家庭愛」。自身の置かれる環境への恥ずかしさ。
心が痛かった。
詐欺を働いた理由は「家が欲しかった」
漠然と「家があれば幸せになれる」と思って、「幸せな人」「持っている人」から持っていない人へ、高い所から低い所へ流れる水のようにお金を巻き上げようとした。
でも欲しいものはHouseではなくHome。
満たされない思いと生まれ落ちた場所を選べない不公平感を抱えながら、罪悪感にまみれながら詐欺を働き続けた。
「親になる」「家族になる」と言ってもらえた時、どれ程満たされただろう。欲しかったものは「家」ではなく「世間では当たり前にあると思われている家族のぬくもり」だったから。
唯一の欲が満たされたあとは、欲しいものはなにもない無欲な姿をみせますが、無欲ではなく「最大の欲が満たされているからなにもいらないんだ」と思うと、泣けてきました。
また、収容されている場所の「寒さ」は本当に情緒的表現だな、と感じました。
極寒、雪。彼の心に吹きすさぶ後悔や満たされない気持ちの現れ。
同じ雪でもアドベントカレンダーの雪は、シーズンが終わっても飾っておきたい宝物。Homeが描かれており、描写の細かさに感嘆しました。

恋人であり、親であり、家族であり、愛のすべてを表現してくれる存在。「相手の気持ちがわからず失敗ばかりしていた人」とは思えない。
2人がお互い欠けたものを補い合い、心穏やかにこの先も生活出来ている事をただひたすらに祈ります。
最高の作品でした。
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