「幻月楼奇譚」番外編集【電子限定版】
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「幻月楼奇譚」番外編集【電子限定版】

今市子

あぁ、これが宝物、と思い出す作品

ネタバレ
2025年3月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 若旦那と与三郎がどうなるのかなんてそんな野暮な事…と聞こえてきそうな淡い世界が好きです。ベタは真っ黒じゃなくてその奥がありそうで。与三郎も若旦那もその手描きから生まれる線だからか、昭和の美しい男性達を思い出してしまいます。カラー表紙はもう、あぁ、そんな男性たちの関係性を初めて知った時の感動というか。こんな美しいものがあったんだ✨という感情を、読み返すたびに懐かしくなります。

そんな2人は私の知らない所でしっかり愛し合っているのだと思ったりするのですが。あ、この2人…と思ってしまう、互いの肌を知らないと出ませんよね…という言葉や空気感を2人からは感じます。そんな夢想をしてしまうのがこの作品の最大の萌えなのかなと思ったりしますが、はっきりしない関係性と怪の物語は陽の当たらない人間社会そのものだなと思ったりもしました。

そして完結しない作品ってこの歳だからか欲しいなと。あの世に行っても続刊を買いに本屋に行ける楽しみが欲しいというか。そんな作者と読者の関係性みたいなものを市子先生だったら築けそうだなと。ものの哀れを微かに、唇は知っていますがそれ以上はまだなんでね…(いやいやいやとつっこむ私)お互い最期の時は互いがいるのだろうなと。
どうかこの様な、物語も絵も全てが耽美で芸術的な漫画が読者から消えない事を願って。
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