どちら様が愛を告ぐ
」のレビュー

どちら様が愛を告ぐ

仁嶋中道

たくさんの視点で反芻

2025年3月22日
カフェを営む25才チナミと、洋食屋で働く同じく25才渚の話。仁嶋さんは「俺のポラリス」など好きで作者買い、伝えたいことがしっかり伝わってくる、骨太な印象。本作も、重いな…と、これ消化できるかなって冷や汗かいたけど、ラストの「どちらさま…」というセリフに一瞬で不安も吹き飛ばされてまっさらにされて、爽やかに終わるんだけどね。でも読後、おばあちゃんの気持ちや、お母さんの気持ち、チナミの気持ち、渚の気持ちを、ゆっくり反芻して、やはり重苦しくてしんどくなる。おばあちゃんが謝っていたこと、子供への抑圧。お母さんの抱えきれない違和感と苦しみ。チナミの悲しみと寂しさと恨み、そしてその恨みがあったからこその幸せ。お母さんは、どんな思いで、子供を捨てて自分の人生を掴みに行ったんだろ、その後どんな思いで暮らしたんだろ。お母さんの気持ちが一番想像しづらくて、もう少し描かれていたらな。おばあちゃんの後悔も。この、サラッと感が良いところでもあり、もどかしいところでもあり。みんなの視点でつい想像して考え込んでしまう、こうなるから大好きだし、苦手だし、読みたいし、読みたくない。
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