チキンハートセレナーデ【電子限定描き下ろし付き】
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チキンハートセレナーデ【電子限定描き下ろし付き】

大島かもめ

作者買いです

ネタバレ
2025年3月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ ただのセ●レから始まった二人が、お互いかけがえのない存在になっていく過程が、2人の過去や生い立ち、現在の状況、心情、あらゆる面から丁寧に描写されているので、とても分かりやすく説得力がありました。
攻めのヒロミチは、自分を押し通すことで誰かが悲しむのは見たくない。それなら自分の心に蓋をして胡麻化しながら生きる方を選んでしまう。繊細で優しい心の持ち主です。
そんなヒロミチの優しさに折に触れて気付き、惹かれていくハヤト。彼もヒロミチを気遣って、明るく振る舞ったり、食事や遊びに誘ったり。
大きな孤独を抱えて生きていた二人が引き合ったのも偶然ではないんだろうと思わせる描写が本編や番外編からも見て取れて、お互いが相手の心の機微を察することができるから、そっと寄り添い合えるんだなと思いました。共に時間を過ごすほどに、その心地良さから離れがたくなるのも頷けます。
私がこのお話で一番素敵だなと感じたのは、心にポッカリあいた穴を、相手の愛情で埋めようとせず、逆に埋めてあげようともしないところ。自分で自分と向き合って、家族と向き合って、自問自答を繰り返し、傷付き何かを失っても、つかみ取った答え。それは信じるに値する、確かに存在する自分自身。
先に答えを出したのはヒロミチで、一度は別れたハヤトの元に帰ってきたところからのエチ、素晴らしかった!この時の私はエチに対する期待より、ただ息を吞んで成り行きを見守っていました。不安が拭いきれず、この期に及んで受け入れることをためらうハヤトに、ヒロミチが言ったセリフが、なんかもう、感無量で「あ~、ヒロミチ頑張ったんだなぁ」ってしみじみ思いました。
あと、ハヤトが依存していた兄とヒロミチの存在を比較できるようになっていたのも、分かりやすくて良かったです。この兄には逆立ちしたって弟の心情を想像することはできない。結局兄には弟が自分だけに縋るように依存している状況はまんざらでもなかったのでは?無自覚だから余計たちが悪い気がしました。ハヤトを手放したくないのがダダ洩れな兄に、ヒロミチが放った言葉には心底スカッとしましたね。兄と3人で話し合った帰り道、ヒロミチに自分の気持ちを言い当てられたハヤトが思い切り赤面して、そこからのハヤトがヤバいくらい可愛くて、最後に彼の口から「愛してる」という言葉が出た時は泣きそうになりました。願いが叶って良かったね!
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