BANANA FISH
」のレビュー

BANANA FISH

吉田秋生

漫画の枠を超えたシェークスピア的傑作!

ネタバレ
2025年3月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私はこの作品をアニメを先に知りました。
 アニメの製作発表会で、担当女性プロデューサーが「この原作の素晴らしさは少女漫画の枠を超えており、ハードボイルドでもありBL要素もあり、、、言葉では到底説明できません。私はこの原作をアニメ化する事が夢でした。」と熱く語っておられました。担当者の熱意が反映されたのか、アニメは画像、音楽、声優、ストーリー等全て素晴らしい出来栄えでした。特に最終回のラストシーンは〈アニメ史上最も美しいシーン〉と絶賛される神シーンとなっています。
 勿論、私もアニメに魅了され、並行して原作漫画を読み始めました。第3巻ぐらいまでは、少女漫画らしからぬ作画に戸惑いました。特に主人公アッシュが超絶美形には見えず、違和感を感じました。けれども、物語のテンポの良さ、巧みな展開、魅力的なキャラ達に心を奪われ、取り憑かれたように読み続けました。作画は巻数が進むほど円熟し、物語のクライマックスを盛り上げました。アッシュが悲劇的最期を迎える予感がして、最終巻を読むのが辛かったです。そして、私の予想の斜め上をゆくラストに顔を両手で覆って泣きました。その後、結末が変わることはないのに『アッシュ、生きるんだよ』と心の中で繰り返しつつ何度も読み返しています。物語の中で、多くの人が劇的な最期を迎えますが、それらは物語の設定上全て必然で無駄なものはありません。結末がわかっているのに読み返したら止まりません。自分が青年期を終え、冷めた目で若者を眺める年代になりましたが、物語からうける熱病にも似た感動は色褪せることなく鮮明に蘇ります。この感覚は漫画というよりは、シェークスピア作の悲劇に通じるものがあります。
 世代、性別を超えて読み続けられる傑作中の傑作、文句無しで、My殿堂入り漫画です。
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