このレビューはネタバレを含みます▼
元は一つの大国だった北の蒼国と南の朱国が戦いを繰り返している中、幼い頃から兵士として訓練されてきた朱国の天陽は、敵の蒼国の砦で将軍•欠月と顔を合わせます。それは2年前に戦死した幼馴染で大切な相棒•雨流でした。致命傷を負って最後に「愛してる」と天陽に告げて亡くなっていった雨流を、天陽は未だに忘れられずにいました。見た目も太刀筋も全て雨流そのものなのに、欠月は天陽のことがわからず冷たい態度と言葉で捕虜となった天陽の命を奪おうとしてきます。欠月は蒼国の呪術師•桃華によって屍器として生かされたのでした。愛する雨流の命だけでなく、その身体も奪われた天陽に、桃華は欠月に雨流の人格を甦らせるよう協力を要請します。屍器のふりをして欠月の側で過ごすうちに、天陽はどんな屍器にも生きていた時の人格があることに気づき、兵器としてモノ扱いされていることに憤ります。そして欠月は次第に雨流として生きていた時の天陽への想いを取り戻してゆくのでした。屍である欠月が、湧き上がってくる温かい感情を理解できずに戸惑うさまに胸が痛みます。両想いでありながら、戦に振り回されて想いを確かめることも口にすることさえ出来なかった二人が、次巻で幸せを手に入れることを願ってやみません。