ロスタイムに餞を
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ロスタイムに餞を

ココミ

私が埴輪になったワケ。

ネタバレ
2025年4月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ ずっと気になっていた作品です。やっと読めました。
昨夜夜中に読み始めたら大量の涙と鼻水で、朝は目がパンパンに腫れて大変なことになりました。

美容師の尽と小説家の桐生は4年付き合っていたけど最近尽が別れを告げ家を出た、というところから話が始まる。
なのになぜか桐生ペースに持ち込まれ、気付けば2人でお笑い見て爆笑してるし。
この桐生の飄々とした浮世離れした感じ、まさに小説家って感じですねえ(個人的意見です)
言葉は知っているんだろうけどあまり口からは発さないイメージもある。ギャグ漫画家が実際はあまり笑わないように(個人的以下略)

この作品は尽目線が多いように思うけど、私が泣かされたのは桐生サイドが多かった。
尽のシャツを抱きしめながらベッドの端で寝ているとか、「これで最後。もう連絡したりしないから」と言った時の表情とか(ほとんど顔隠れていて見えないのに)、スマホの写真を愛おしそうに見つめる姿とか。

本気で知りたいわけではないだろう梅酒の飲み頃を聞くラインとか、婚約パーティーの帰り尽の後をてこてこ付いて行きながら「まるっとバナナあるよ」とか。
去る者追わずタイプだったのに、最初はカラダで繋ぎ止めようとし、かと思えばこんな子供のような言動で尽の気を引こうとする桐生がとても愛おしく見えてしまって。

とどめの抱き合った後の「帰ってきて…」
既に涙のダム決壊してたけど、ここで全壊しましたね。
他にも駅で合鍵返す場面や、楽しかった日々の回想シーンは全て大号泣でした。
過去一泣いた気がします。そりゃ翌朝目がはにわになるはずです。

尽が別れを切り出したのは、浮気とかDVとか借金とかではなく、ほんとに些細な不満の積み重ねが原因で。
これは我が身に置き換えてみても充分あり得る話で。
長年連れ添うと「言葉は要らない、なくても通じる」となりがちだけど、一見ステキな言葉っぽく聞こえるけどそれじゃダメなんだよなとたまに思いつつも、実は私も桐生のようになっている部分がある。
尽だって欲しかったのはほんのちょっとの言葉と気遣いだったのよね。やっぱりそれってとても大事で、ずっと一緒に居たかったらそういう些細な事を怠っちゃだめなんだと2人に気付かせてもらいました。ありがとう、これからは会話を大事にますます幸せになってね。

朝はにわだった私の目はだいぶマシになったけど、まだ少し重いです…
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