このレビューはネタバレを含みます▼
物語の世界観が独特で奥深くて素晴らしい。マナーやルール、犯罪などグレーゾーンがあるものもありますが、生死にはないんですよね。一線を越えるか越えないか。その一線の一歩か、もっとギリギリの半歩手前で踏みとどまった草太。そういう状態の時って、生を求めるのは心じゃなくて身体なのかもしれません。手作りの温かいご飯を誰かと食べることで、食事の温かさが心にも栄養として行き渡る…そんな気がしました。
草太側の話も喜八側の話も生死に関わる苦しく悲しい話でしたが、数々の心に響く言葉に癒され気付かされて、幸せになる感動のストーリーでした。あとがきの物語のその後の考え方も私の想像していた未来と同じだったので、安心しました。
先生の作品は、どれも沁みる名言が多くて漫画なのに文学作品を読んでいるような気になります。今回もたくさん名言がありましたが、一番を上げるなら「生きるために働きな 働くために生きるんじゃないよ」です。
真面目に一生懸命になりすぎると、流れに乗ったまま目的と手段が逆になってしまった事に気づかない…生きること以外にも当てはまると思います。このセリフは本末転倒にならないようにと、優しく教えてくれているような気がしました。