愛すべき娘たち
」のレビュー

愛すべき娘たち

よしながふみ

完成度的には星5つ

ネタバレ
2025年4月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 娘、母、祖母、3世代の「娘」たちのそれぞれが描かれ、完成度の高さは素晴らしいです。
ただ、リアルすぎて、そのリアルさに気持ちが沈んでしまった。
祖母のしたことが、ひどいと思うんですよね。祖母は、自分のコンプレックスを弱い立場である我が子に押し付けて自分の鬱憤を晴らしていたに過ぎない。これは、個人的に「親としてしてはならないこと」の筆頭にあたると思っています。けれども作中でこの祖母には何の罰も与えられない。孫に軽蔑もされず、人はそれぞれ弱さもあるって感じでただ許されてしまって、なんとなく平和にまとめられちゃうの。
現実はこんなもんではあるんですよ。祖母に不当な扱いを受けた母、その母の娘は祖母に可愛がられて「お母さんは気の毒ではあったかもしれないけど自分に優しかったおばあちゃんは好きだし」ってなるの。自分の立場がこの母に近いから、せめてフィクションでくらいもう少し報われてほしいっていうか娘に味方してほしいっていうか祖母にバチ当たれっていうか……。
この作者さん、他の作品でもそういう傾向があって、ご本人がおおらかで細かいことを気にしないでいられるタイプなんだろうなって推察します。
描写が上手いだけに、そのおおらかさに「過ぎたことをいつまでも引きずるものじゃないよ?」「復讐は何も生み出さないよ?」って責められている気分になってしまって、読後感がとてもつらかったです。
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