アキちゃんは好きで魔性なんじゃない
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アキちゃんは好きで魔性なんじゃない

河馬乃さかだち

アキちゃんは魔性なんかじゃなかった

ネタバレ
2025年4月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『フーゾク店で彼氏はできるか?』のスピンオフです。スピン元なしでもお楽しみいただけますが、読んでおいた方がすんなりとストーリーに入り込むことができます。

望んでいないはずなのにクズを引き寄せてしまうのはなぜなのか?
諸説ある中で『自分は雑に扱われてもいい存在なのだと無意識的にサインを出してしまっている』説がもっとも当てはまりそうな押之見暁斗こと身寄りのないアキちゃんが自分を大切にできるまでを描く、痛くて切ないラブストーリー。
高2の夏。顔がエロい…ただそれだけで不良少年たちのおもちゃにされ、いつしか思考がフリーズしてしまった押之見のアキちゃん。ひたすら男に抱かれ、抱かれ、抱かれ、すっかり後ろで感じるようになった頃、うっすらと笑みを浮かべればひどく殴られずに済むことにふと気づく。そうして媚びながら命をつなぎ、漫然と日々を過ごしていたところで7年ぶりに元同級生の小柳と再会。はじめはちょっとからかってやるだけのつもりだったのに、なぜか彼にだけは作り笑いが通じない。昔から俺をエロい目で見ていたくせに…なんで俺の方がお前を欲しがって、お前とじゃなきゃ感じなくなっちゃったんだよ___?
そんな心ここに在らずな態度がチンピラ飼い主の逆鱗に触れカン禁されてしまうアキちゃん。五日に渡りマワされるシーンがものすごく丁寧に描かれているためこちらの心も折れそうになります。終わりの見えない暴力に屈し「これまでも散々おもちゃにされてきたはずなのに、なんでもう嫌なんだろう?なんでいつもこうなっちゃうんだろう…」と絶望しかけたアキちゃんでしたが…勇気を奮い起こして小柳に助けを求めたその時から「アキちゃん」という蔑称が愛称に変わり始めるのでした。

とどのつまりはどう呼ばれるかではなく、誰にそう呼ばれるか。
アキちゃんにぞっこんな小柳の愛を栄養に、チンピラを寄せ付けないほどの気高さを取り戻してもらいたい…願わずともそうなりそうな、愛も希望も未来もあるラストです。
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