【単話版】天稟
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【単話版】天稟

たかせりえ

一生涯の忘れられない宝物になる

ネタバレ
2025年4月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 電子でヒットすれば紙書籍も出るそうなのでもっともっと売れてほしい。たった一枚の宣伝の画像から試読してこれほどまでに引き込まれて即購入した漫画はなく、出会えて本当によかったと思える作品です。
先生が仰っているように導入部分から本格時代劇の様相と美麗な作画に心撃ち抜かれて夢中になりました。BLらしからぬ無骨な武士たちの描かれ方が大変好ましく、眉目秀麗な主人公達と背景や装飾品もページの隅から隅まで細部に渡って描き込まれており、これほどまでに趣向の凝らされた漫画を見たことがありますでしょうか、まるで画集を見ているのかと錯覚しそうなほど、江戸の風景も細やかで美しいです。
物語に関しても江戸や武士と介錯人のことなどなるほどと思わせる、図解釈付きの素晴らしい歴史小説を読むような満足感があります。そして心情に迫るシーンは深く、1話の切腹場での介錯人和泉が機転を効かす最期の桜と目白の場面では、罪状は何であれ心神喪失状態の罪人の目に正気を取り戻させ、世は美しいと示して逝かせたことに心が締め付けられました。翌日の場面でわかりますが、和泉は主人公甚介と猫のしっぽ二人の間に何かしらの関係があると思っていたのでしょう。
甚介と和泉の間に芽生えたばかりの想い、特に和泉はまだ心のうちを明かしておらず「どういう積もりで」と甚介が思うと同様に読む側もどんな意図なのかと感じ「お前に見染れもしたなら」からのくだりで、言葉の美しさに惚れ惚れとし、「一時の徒事と……口上は聞きたくない」の流れで焦燥感と不安に苛まれた甚介の思いに共感してふと涙が出ました。
明るい家族が居ながらも哀愁漂う甚介の境遇や生い立ちと、和泉の兄の話や憂いを帯びた眼差しから、二人の行く末に影響するような隠された事実が炙り出されていくのではないかという不穏な空気も感じられましたが、作者様がハピエンだとXで発言されているので安心して読み進められそうです。
二話前編での刀剣押型を二人で拓る場面では、茶屋でのようなぶつかり合う激情だけの関係でなく、心通わせて春の陽の暖かさの如く仲睦まじくなっている様子にホッとしました。無邪気な二人の場面ももっと見たいですし、ここから一波乱はありそうですが二人には早く幸せになってほしいなあと切に願ってます。続きが楽しみです。応援しています♪
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