このレビューはネタバレを含みます▼
ずっと狙っていた作者さま。スピン元と両方値下がりした神タイミングで迷わず購入。
またしても素晴らしい作品に出会ってしまった…近ごろのBLの完成度たるや一体どうなっとんねんという話です。
こちらはデビュー作『フローライト・スター』のスピンオフでありますが、巻末にはフローライトの番外編も贅沢に盛り込まれたなんとも読者思いな一冊。このシリーズはバンドマン同士、兄だったり弟だったりの身内だけで繰り広げられる恋愛物語なので、相関図はわりとコンパクト。それでも音楽好きやバンド好きなお方なら作品の訴えるメッセージ以上に感じるものがあるのではないかと思います。
攻めのしゅんは年下美青年ながらも雄くさく、受けの律(表紙の彼)は中性的でありながらしっかりと男気を持ち合わせている。骨格も細いのに男性的で、胸鎖乳突筋の美しい曲線に、輪郭の浮き出た顎のラインに…とくにのど仏の丁寧な描き込みに先生の並々ならぬソウルを感じます。とにかく総じて絵柄がいい。ものすごくいい。
内容もさらっとしているようでいてそうでもなく、想いのベクトルがしゅん→律→しゅん兄→嫁という絶望的な一方通行から始まるのですが、しゅんも律もお互いを憎からず思っているので逆に距離感が測りづらそうでした。それもそうだ…極端に避けねばならない理由もなければ、急に向き合うこともできず……玉砕覚悟なしゅんにめっちゃアプローチされる律の葛藤が繊細なタッチでじりじりと伝わってきて、どういう形でまとまっていくのかちょっと予想ができませんでしたが、そこはやはりバンド漫画…バンドマンならではの胸熱展開を機に2人の関係性は熱を帯びていきます。
それにしても全員顔がいい。いいヤツと美形しか出てこないエモ作品なので、うっかり視力が上がるかもしれません。