ラスト・メッセージ
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ラスト・メッセージ

小中大豆/二駒レイム

構成は勿体ない

ネタバレ
2025年6月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者さん買いです。
SF的な惑星での貴族社会を舞台にした、騎士×貴族の死に戻りものです。愛のない結婚をした2人が、実は誰かの策略で仲違いを助長されていた挙句、殺されるのを阻止する…というお話。
キャラクターもいいですし、お話も設定自体は面白いと思います。作者さんの書き方は癖がなく、それでいて会話の運び等がきゅんとするのでどの作品を読んでも酷いハズレはありませんし、この作品もそうです。
しかしストーリーの構成と駆け足すぎる展開は、この作品を名作とは言えないものとしています。

まず、作品の最初5-6割がずっと過去回想です。受けの境遇と学生自体、攻めとの出会いや交流がずっと描かれます。その上SF的な世界観が結構不思議な世界観なので、それを説明する文章にかなり多くが割かれている。
ストーリーの序盤で攻めが死に、受けも殺され、どうなる!?というところでいきなり長文の過去回想が始まる上、それが物語の5-6割を占めるのはどうなんでしょうか。

その後死に戻りをして、初夜に戻ってきた受けが色々と発言することで2人は両思いだったということがさっさと判明しラブラブ展開。7-8割の時点でようやく黒幕は誰だ?という話になり。最後はさくっと黒幕等を捕まえて終わり。
殺されなくて良かったねエンドで、最後に濡場シーンもなし。
うーん……。物語の構成としてバランスが悪すぎませんか?
過去の回想や珍しい設定の話が大切なのもわかりますが、であればせめて最初2-3割程度に収めて、その後死に戻りしてから徐々に2人の誤解が溶けていく方がドラマチックです。いきなり戻ってきたその日に和解!ラブラブ!て…うーん。
そして黒幕を掴むのも、もう少し泳がせたり難航した方が最後の爽快感は増すかと。

作者さんの書くお話は好きですしいつも読みやすい文体なのですが、たまに最後に怒涛の解決編を入れ込んでアレ?これで終わる?ていうのがあるのが、少し残念です。今回もそれにやや当たる気がします。

とはいえキャラクターやお話そのものは好きでしたし、死に戻りをしてから愛を得た受けに良かったねえとなってキュンとしたので、読んで損だとかそんなことはありませんでした。
ラノベ出身作家さんの文章が苦手なことも多い中、こちらの作者さんはそうではなく読みやすいですし、また次回作も楽しみにしています。
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