ソムニア
」のレビュー

ソムニア

冥花すゐ

メリバを謳うだけのことはある秀作

ネタバレ
2025年6月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 気になっていた話題作にとうとう手を伸ばしました。
まずは…メリバであることをこれだけ大々的に宣伝しておいてそうでなかったら袋叩きに遭うであろうリスクを背負い、このような作品を送り出してくださった作者&関係者さまに敬意を表したい。

安心してください、紛うことなきメリバでした。しかも絶妙に皮肉の込められた、最高に笑えないブラックジョークみたいな。
失うものが何もない元天才外科医と、夢と現実の区別がつかなくなっている夢遊病者のような寧(やすし)。何の病気かはわかりませんが、負い目を感じ死を願うばかりだった寧が、寧を生かしたいと願う霧崎と恋に落ち徐々に自我を取り戻すとともに、自分を取り巻く異常な現実を突きつけられようやく夢から醒めるのだけれど…
死にたいと願っている間はどう頑張っても死ねなかったのに、生きたいと覚悟を決めた途端に死神がスパッと寿命を刈り取りに来るだなんて…こんなにやるせなくて正確無比な終わり方、思いつけます??
せっかく、腹を括りブラックジャックみたいに渋くなった先生と本当の意味で両想いになれた寧だというのに…天網恢恢疎にして漏らさず(良いことも悪いことも見逃されることはない)、因果応報とはよく言ったものです…
夢うつつ、わけもわからず霧崎に抱かれていた頃とは違い、互いの罪を自覚しながら生きていこうと決心したのちの終幕でした。

ひとつだけ気になったのは、霧崎の起こした医療事故と寧は無関係でおK??というところ。エピソードがあっさりで明確に線引きされていなかったように思うので、事故の被害者と寧を一緒くたにしそうになります。
深刻なミスを犯し魂の抜けていた霧崎のまえに無垢な天使(寧を担当していた)が舞い降りて、そこから2人の夢物語が始まった、と解釈してもいいのだろうか?そこだけはちょっとモヤる。

ソムニア……眠り、夢、というシンプルなタイトルを一切裏切らない作品ではあると思います。
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