様々な嘘のカタチ

ネタバレ

2025年6月2日

このレビューはネタバレを含みます▼ ある男を陥れる為に作り上げられた嘘の姿で、有名な実業家の娘と婚約をする男のお話。
とにかく重厚で濃密なストーリーで、大ボリュームの一冊となっています。「ジャックの犬」として汚い仕事も請け負ってきたニール。ついにジャックの長年の目的であるリリーの婚約者としての仕事を始めます。しかし、リリーとの出会いがニールを変えていきます。
最初はリリーやデヴィッドを騙す為に嘘の姿で接していたニールが、穏やかな日々の中で心を取り戻し、彼らを守るために嘘で闘う。人を騙す嘘が人を守る嘘へ。その根底にあったのは、人を愛する気持ちでした。ニールは愛を知り、愛されたことで、嘘で塗り固められた人生から抜け出せた。それと対比するかのように、ジャックの人生には愛がなかった。ジャックは歴史と慣例というしがらみの犠牲者ではありますが、愛することも愛されることも分からない、悲しい人だったんだなとも思いました。ジャックを愛してくれる人がいたら、運命は変わっていたかもしれないと思います。愛と歴史と個人の幸せ、そんな壮大なテーマが描かれていると思います。
一つのストーリーではありますが、様々な人物の視点で語られ、様々な人物の心情がきちんと描かれているので、最後はスッキリとすることが出来ました。場面を小話で区切りながら展開するスタイルが功を奏していたと思います。そして、最後にこれだけは言いたい。デヴィッドパパが一番カッコ良かったです！

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くりさん

(女性/40代) 総レビュー数：0件

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