棺にさよならの花束を
」のレビュー

棺にさよならの花束を

rosca

生きる権利、死ぬ権利(読み放題)

ネタバレ
2025年6月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ ちゃんとBLで、しっかりエチシーン(リバ)もありますが、前半で読み手の死生観をぐらぐらと揺さぶってくるので、かなりそこに感情が引っ張られます。

この世はとかく「頑張って生きる姿」を尊いものとしがちで、その姿勢に人は勇気づけられます。
しかし、余命宣告を受けて自死してしまう人や、家族を失い後を追う人が存在するというのもまた現実です。

あっけらかんと軽薄に自死の計画を語る明星ですが、彼の過去を知ると、むしろここまでよく頑張ったね、もういいよ…と言ってあげたい気もします。彼の計画を責めたり怒ったりできるのは、本当の意味での『身内』しかいないのではないでしょうか。と考えると、物語の方向性もおのずと見えてくるのです。

物語の結末に納得しつつも、では、この世に未練もなく、成し遂げたい目的も持たず、悲しむ身内もいない人の自死を引き留める言葉ってあるだろうか…とつらつら考えてしまいます。久永と出会わない世界線の明星ですね。彼を止めることは可能でしょうか。彼を止めることは正しい行いなのでしょうか?

尾を引く読後感です。
いいねしたユーザ7人
レビューをシェアしよう!