夏を焼きつけて
」のレビュー

夏を焼きつけて

金田力金男

今を生きる

ネタバレ
2025年6月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作家様買いです。『陽炎がゆれている』と同じ世界線の、また別の物語。

運動神経抜群の三島清純と、新聞部の沼津嘉樹。二人は幼馴染。お腹の中の弟と共に母を失った三島、「なにがあってもずっとキヨの味方だから」と誓った沼津。部活の勧誘を断り続ける三島は、亡き母と弟との約束に、いまだ囚われたままだった。三島が気がかりで仕方ない沼津。そして迎える、幽霊が出ると噂される盆踊りの夜。懐かしい香りに導かれるまま、三島が邂逅を果たした相手とは――。

夏が似合う、黄泉比良坂のような神社での不思議な体験。愛は時空を超えて届くということ。忘れることは裏切りじゃない、受容と同化なんだ、そう語りかけてくるような物語に、深く心を動かされました。

そして『陽炎〜』の二人のおまけも最高でした。たった2ページなのに。じんわり暑い夏の夜、花火の匂いや音、非日常的な空間。照れ臭くて、でも心は高鳴って、じっとり汗ばむような空気感。お互いがお互いにだけ向ける、特別な眼差し。その全てが伝わってきて、胸がいっぱいになりました。凄いです。
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