魔物の晩餐
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魔物の晩餐

UMIN

魔物の飢え

ネタバレ
2025年6月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人外中華BLの好物3点盛り。人を喰らう魔物が赤子を最高の晩餐にしようと手塩にかけたら。星⭐︎4.2

都から離れた山深い所に住んでいる魔物。名前は朱月、龍の化身なのか時折り角と鱗が見え隠れする。通称は主様。どこで生まれどんな育ちなのかは作中のエピソードはない。生きていく術を持っていて不自由なく生きている。ただ一つ、激しい飢えが襲うことを除けば。
主様は渇きを潤すために人を喰らう。白兎は生まれたばかりの赤ん坊。しかも親が口減らしのために、わが身可愛さで主様へ献上しにきた捨て子。主様は気まぐれで赤子に名前をつける。それは食べこたえのある晩餐にしあげるために。

物語を読み始めは「捨身月兎(しゃしんげっと)」を連想していた。日本だと因幡の白兎なんかあてはまるかもしれない。だが、激しい飢えに襲われても主様は白兎を食べない。いままで散々迷いなく喰らってきたのに(なんなら白兎の親さえもペロリだった)である。違いはなにか。主様は人間ではない、永い時間をいきている。その中で飢えを癒す方法が喰らうことだったのかもしれない。そう思うと魔物は哀しみを抱えて生きているように見えてくる。そこへやってきたのが無垢な赤子。「いつか食べるぞ」といいながら世話を焼き、「いつか食べるぞ」といいながら側で愛でる。魔物の中の何が変化したのか。魔物が主様となるのに必要だった白兎。飢えに必要だったのは白兎の肉体だったのか。そもそも本当に飢えだったのか。この『魔物の晩餐』シリーズは14まで出ている。シリーズ後半は白兎が成長していく過程が楽しめて読み応え十分。食事も洋食ばかりだと飽きてしまうのでたまには中華はいかがだろうか。

魔物の晩餐は表紙が印象的、少ない色数に美しい衣装をまとった魔物。愁いを帯びたたたずまいに物語の雰囲気が漂っている
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