Deadmeat Paradox 電子限定『義父の息子』収録版
」のレビュー

Deadmeat Paradox 電子限定『義父の息子』収録版

金田サト

ゾンビ設定の情報不足

ネタバレ
2025年7月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 251ページ。
設定に細かい人間には、ゾンビに関する情報量が圧倒的に不足していて、没頭できませんでした。

絵はスッキリと読みやすく、兄弟の絆だったりドクターの思い出話だったりはなかなか面白かったです。
裁判に関するストーリーも、逆転劇が派手で、悪くなかった……けどまあ、そもそも保険金を受け取れるのは「生者」に限ると思うので、裁判を起こす根底に矛盾があるとは思います。
ゾンビに関する設定があまり詳しく描かれていないため、ゾンビの扱いが「差別」に当たるのかが判然とせず、モヤモヤしました。ゾンビになる病気の仕組みであるとか、ゾンビとして復活する人間の割合であるとか。ゾンビは皆かつて生きていた人間であり、家族もいるわけで、この話のように「人間」と「ゾンビ」としておおっぴらに社会的分断が出来たというのも自分にはいまいち納得できないし、そこに至る過程が作中に描かれていない。
ゾンビを使って「民族などの差別問題」を安易に絡めた印象で、平等を説くのならば条件をもう少し深く考えてほしいです。捻くれ者なのでこういう「差別」らしきものを美談っぽくまとめる系は苦手です。眠りも食べも老いもしないゾンビが果たしてラストのように共生できるのかっていうとそこも疑問で、やはりそもそもの問題点であるゾンビ病が曖昧すぎるのがいけなかったなと思います。
厳しめの星2つ。

同時収録の読切は、ビジュアル面の演出的には達者だと思うけれども、描写が物足りない。赤ん坊になった主人公に対するひき逃げ犯の男からの愛情が、じわっと伝わってくるような印象が無く、文字だけで進んでしまった感じです。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!