奈落の星
」のレビュー

奈落の星

豊田悠

奈落からの景色を見た者しか分からない世界

ネタバレ
2025年7月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『同じ庭を見ていたはずなのに、
あの男に見えていたものが、
僕には見えなかった』
凄い台詞ですよね。
烏丸氏も柳楽氏も状況は違えど奈落を経験し、
作品に生かしている。

豊田先生の『30歳まで~』も勿論好きですが、
『奈落~』もかなり好きです。
時代背景も精神論も、どストライクです。

男の嫉妬、執着、凄いですね。
女性とはまた違う心の内があるのでしょう。

柳楽が烏丸に対して罠を仕掛けたり、
意地悪をするのではなく、
文才で烏丸を負かしたいと思う、
そこだけは純粋な執着と嫉妬が悔しいくらいの憧れが、
物語としてとてつもなく魅力的で、
また烏丸も男として柳楽との差を見せつけられ、
嗚咽するくらいの嫉妬の業火に焼かれている。

蹴落としたり、罠に嵌めたり、
横取りしたり、殺したり、書けなくする方法は、
幾らでもあるし大袈裟にドラマチックだけど、
この精神論だけでただ純粋に負けたくないという、
どす黒い嫉妬の思いで切り込んでいこうとするのが、
読んでいるこちらには魅力的に思えます。

この漫画を読んでいたら『ガラスの○面』の、
北島○ヤと姫○亜弓の因縁の対決を思い出しました。
(こちらの決着はまだまだ付きませんが)
天性の才能を見せ付けられる場面はまさにソレ。
表現者としての何か共通点を感じました。
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