グレイゾーン
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グレイゾーン

朝御飯丸

日常こそドラマ

ネタバレ
2025年7月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 開かずの扉に白い粉…のっけから事件性を漂わせる描写が続くわりに、最後までとくに何も起こらない……ように見え、晶(あきら)と創一(そういち)の間には着実にドラマが生まれていた。

家と大学とバイト先をぐるぐる回るだけの毎日。これといって特徴のない晶の暮らしに突如舞い込んできた、創一というイレギュラー。高学歴でグッドルッキング、クレーマーの言いがかりにも動じない完璧人間な創一と自分の人生が交わることはないと思っていたのに、共通の趣味を通じ流されるように体の関係を結んでからというもの、だんだんと創一とのグレイな日常にハマっていき…
あるとき、得体が知れないはずの創一の平凡さ(それでもだいぶ変わってるけどね??)を目の当たりにし、一方的に期待を裏切られたような気持ちになる晶であったが、彼との間に生み出された新たなルーティンは、ゆっくりと晶を侵食していたのだった。

誰かに人生を変えてもらおう、打破してもらおうとする受け身な姿勢からラブを抽出するのは至難の業でしたが、自覚するまでに時間と手間がかかっただけで、気づいた時には手遅れで…っていう創一蟻地獄な感じがすごく良い。
創一の密かに抱えていた劣等感や諦めぐせがアングラな勘違いを誘発しラッキースケベに恵まれたわけですが…その背景、好きなことを好きと言えなかったそれまでの人生は、普通にちょっとかわいそうです。
それゆえのコミュ障か?ぬるっと晶との距離を詰める創一のやり方は若干狂気ですがwそこに嫌悪感を感じない時点で晶もとっくにやられていたのだと思います。
最後…創一の独占欲に触れ、改めて満足する小悪魔風な晶を見て…きみ、没個性ちゃうやんとツッコミを入れたくなりました。
感動や萌えを瞬発力でもって圧倒してくる作品ではないけれど、じわ…じわ…と少しずつ読者を蝕むようなアメーバ作品。ひとまず一旦完結しますといった感じで、続編があってもおかしくない終わり方です。
そして何より修正が神!そのうえトーン使いが絶妙ですごく生々しいので、シンプルなのに質感が伝わる。
2022年のデビュー作。この頃の海王社さんはトガっていた…
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