このレビューはネタバレを含みます▼
家族物のBL作品は「地雷」という方は、少なくないかもしれません。
私自身そのジャンルを何作品か読了しましたが、正直ちょっと無理かな…と思うものもありました。
しかし本作品は、血縁ではないものの家族として暮らしてきた叔父と甥が、恋愛へと進む過程を非常に丁寧に無理なく描いており、家族物BLに忌避感を持っている方でも受け入れやすい作品なのではないかと思います。
作者は波真田かもめ先生で、『スモークブルーの雨のち晴れ』が大好きなので購入してみたのですが、結果こちらの作品も大好きになりました。
主人公充(みつる)の血の繋がらない甥泉水(いずみ)は、大学入学と同時に家を出て、20歳になる頃突然戻ってきます。
義理とはいえ伯父に恋心を持ってしまった泉水が、充と離れていた2年の間に何を考え、どんな覚悟をして実家に戻ってきたのか。
そして、自分に向けられる泉水の気持ちに戸惑いながらも、真摯に泉水と向き合おうとする充の優しさ。
家族としての愛、そして恋人に向ける愛ーー同じ「愛」でありながらベクトルの異なるそれぞれの「愛」を、いかに二人が受け入れていくのか。
そういう過程が、説得力ある描写で丁寧に描かれているのです。
琴線に触れた場面はたくさんありますが、特に心に残っているのが次の言葉です。
「俺たちはあまりに深い哀しみと生を共にしてきたから性と交じりあって恋をすっとばして愛になってしまったんだ」
家族と恋人との境い目はあまりにも曖昧で、はっきりと区切りをつけられる訳ではないけれど、互いを思いやりながら共に歩もうとする二人を心から応援したくなります。
また、読了後は「たまゆら」のような一日一日一瞬一瞬を大切にしたくなる、そんな作品でもあるので、ご興味のある方にはぜひ読んでいただきたいです。