このレビューはネタバレを含みます▼
登場人物や物語の舞台は架空設定のようで18~19世紀頃のヨーロッパ大陸、ヴァイセン≒プロイセンでバーゼルラント≒バイエルン王国あたりがモデルかな?と。
軍記モノなので戦闘シーンも大いにあり読み手を選びますが、戦いの場が時には議会だったりで面白いです。
バーゼルラント第1王子もモデルがいるようで、作中に出てくるお城が世界一美しいと謳われるノイシュヴァンシュタイン城のように見えたりします。ですので、第1王子に関してはもう少し耽美的かつ退廃的な雰囲気の美男として描かれていても良いのかな?と思います(笑)。
対して弟の第2王子はというと中々の人物で初めは不遜な態度が鼻につきますが勇猛果敢。
他にもフランスの有名な建物が描かれていたり、オーストリアの女帝がモデル?(結婚政策等)とか、この戦術はネルソン・タッチ?(トラファルガー海戦/英・海軍提督の戦術)などと実在の人物や国、事柄を置き換えてパズルのようにみるのも面白く、フィクションの自由度も楽しみながらフワッと世界史も学べる内容。
主人公のバルツァー少佐はというと、一介の軍人にしてまぁ頭がキレる人で。
普通に出世欲のある青年将校で基本実利に基づき合理的取捨選択をしていきますが、だからと言って冷酷無慈悲という訳ではなくその思考は柔軟です。
視野が広く頭が回るので前線での働きはどんなものかと思っていたら、叩き上げ風の泥臭さがあり実戦で頼りになります。発想と応用力、視座の高さが素晴らしい。
お偉いさんの目には何かと留まり、お目付け役を付けられたり、人生狂いそうな打診をされたりの苦労人で上司と部下に挟まれる中間管理職。 気の休まる暇のない馬車馬…。
尚且つ人事異動も激しいとか「あぁ… 組織人」という感じです、気の毒なほどに。
バルツァーとお友達のリープクネヒトや第2王子との掛け合いも面白いですし、バーゼルラントの教え子たちも優秀で戦闘の考え方や組み立て方がバルツァーに似てきているのも興味深いです。
ただ、主君への忠誠や戦闘に命を懸けるような年齢でもないだろうに… と思うとこの子たちの懸命さが胸熱で。
若くても軍籍に身を置く者の辛いところで応援したくなります。
また作中の所々に出てくる”暮らしのワンポイント”が微に入り細をうがつ内容で大変ためになります。解説が素晴らしい。
本編も読み出すと止まらない系なので、総じて良書です。