妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~(分冊版)
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妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~(分冊版)

橘ちなつ

読んで本当によかったです

ネタバレ
2025年8月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私の母は私を産む前から精神疾患があり、当時は精神病棟に入院するというのは、家系的にも恥ずかしい、隠したいという時代でした。今では精神科に通うことも、誰にでも有り得るという時代になりましたが、当時はキチガイ病院、キチガイ病と言われたと言っていました。
母は産褥期精神病とは違いましたが、この作品を読んで他人事だとは思えなくて、想像以上に相当な苦労をしてきたんだな、とあらためて思うことが出来ました。

父が病気に理解がなかったので、どうにか普通の生活を送ろうと、でも結果的にひとり苦しんで、私に子供ができた時に孫の世話をしてやりたいのに、体力や精神が追いつかずに限界突破してしまって、千夏さんのように錯乱状態になっている母を目の前にして、初めて事の重大さに気づきました。

私が小さい時から、母は身体が弱くてよく入院してると思っていましたが、全然そんなんじゃなかった。もっと周りも理解をもって、私たちが思っている普通は、普通じゃないことだと気づけていたら、離婚もせずにまた違った未来もあったのかなと思います。

錯乱状態のときに、初めて閉鎖病棟に一緒に向かいましたが、これが本当に病院なのかと思うくらい、入ることに恐怖心で足がすくんだことを今でも覚えています。
檻のような部屋で、監獄のようにトイレとベッドだけある部屋に座っている母の姿が今でも忘れられません。
母を入院させて、帰りの車で号泣しながら帰ったことも鮮明に覚えています。

今でもたまに少し休むために入院することもありますが、前とは別人のように、子供みたいに手を振って嬉しそうにしてる幅を見ると、当たり前なことなんて何一つないんだなと思います。つい子供にも怒鳴り散らして怒ることもありますが、一緒の家で暮らしている時点で、奇跡なんだなと。

言ってることがコロコロ変わる母に、イライラしたり疲れる事も正直ありますが、生命がけで産んでくれてありがとうとあらためて思うことが出来ました。もっと色んな人に読んで欲しい、当事者も周りも、希望をもてる作品だと思いました。
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