恋する食卓【完全版】【イラスト入り】
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恋する食卓【完全版】【イラスト入り】

樋口美沙緒/末広マチ

受けと攻め視点でガラッと雰囲気が変わる

ネタバレ
2025年8月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 面白かった。攻めは売れっ子作家でドラマの脚本やテレビのコメンテーターとマルチに活躍する都会的な男。そんな攻めの家に地元の田舎から幼馴染の受けが転がり込んでくる。攻めは貧乏でどん臭くてお人好しでいつも損な立ち回りをする受けをほっとけなくて何かと構ってきた子供時代。そして受けが初恋だった。プライドが高くていつも偉そうな攻めがちゃんと素直になって受けにもう一度告白する話かな〜と思っていたら話はどんどん不穏な空気に。予想以上にシリアスでしんどい。攻めから見た受けの素朴で清らかでたんぽぽの綿毛みたいな人柄が、受け視点では違って見えるのが面白かった。あと受けは攻めを心底可愛いと思っているらしくて、受け視点の攻めが最初の高慢ちきな印象から随分可愛い男に見えるのも印象的だった。お金が全部だよ!全部だったじゃんか!という弟の言葉にそうだねと言ってしまいそうな気持ちを押し込めて「お金だけが、全部じゃないよ」という受けのシーンにこれまでの二人の人生を思って泣いちゃった。攻めがサイズを間違ったと言って買ってくれる服、余ったからと差し入れてくれる野菜や果物、そういう幼いぶっきらぼうな優しさを施しに感じたり僻んだり、純粋な優しさだけを受け取れない自分を嫌に思う気持ち。だけど攻めが好きな気持ち。この込み入った感情の描写が良い。攻めの「俺は受けが好きてたまらないのに、同じくらい受けが好きな自分を恥じていた」というセリフも印象的。
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