囀る鳥は羽ばたかない
」のレビュー

囀る鳥は羽ばたかない

ヨネダコウ

私はこれでBL漫画にハマりました

ネタバレ
2025年9月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 映画化もされている、まさにBL漫画界の至宝。

ヤクザという裏社会を骨太に描きながら、同時に矢代の内面と、矢代と百目鬼の不器用で純粋な愛情を、痛々しいほど繊細に写し出している作品です。

当作品の魅力は語り尽くせないほどあります。
この作品には余白の部分が多く、具体的に言えば、「言葉の省略」「セリフの省略」が非常に多いです。
それは言葉のみならず、場面割りにおいても、必要でないものはいっさい描かれていません。
そうであるからこそ、読者は1つの言葉も1つの場面も見逃すことなく、時間を掛けてじっくりと読み進めることが必要となり、また読み返していく度に新たな発見がある、それこそがこの作品の最大の醍醐味となっています。

矢代を始めとする登場人物の表情や、数々の場面から、その裏に隠された感情に思いを馳せ、その余韻にひたる。
全てを絵やセリフで表せてしまう漫画でありながら、読者の想像を喚起する、そういう贅沢が許される作品であることが、この上なく尊いです。

そして、もちろんストーリーの面白さ、キャラの魅力なども素晴らしく、登場人物同士の絆の深さや因縁などが後に明かされるパターンも多いので、伏線になっていた場面が回収された時の説得力と満足度がすごいです。

現時点では9巻まで刊行されており、(おそらく終盤となる)山場も近くありそうですが、早く次巻を読みたいという気持ちと、永遠に『囀る』の世界が終わらないで欲しいという気持ちが、せめぎ合っています。

読んだ後はしばらく囀るのとしか考えられない…それほどハマってしまう作品です。
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