サイコ×パスト 猟奇殺人潜入捜査
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サイコ×パスト 猟奇殺人潜入捜査

本田真吾

主人公の正義感と熱血さが救い

ネタバレ
2025年9月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 個人的には苦手分野のスプラッターホラー。それなのに読んでしまったのは“捜査”とあるから、何か救いがあるのかと思いまして…。

主人公は五代一哲という熱血刑事。犯人への過剰暴力が問題となり異動させられる。異動先は「捜査第五課」超能力により過去に戻り、連続殺人犯の行動を未然に防ぎ、被害者を救済するという。(かなり荒唐無稽だけど、そこは漫画だから)過去への戻り方は、五代刑事とその事件の被害者の精神が入れ替わるという方法。しかも五代刑事が失敗した場合、もう戻れないという命がけな手段。肝心の超能力の使い手は上司の飛高警視正。この人物も物腰は柔らかいものの怪しさ満点で曲者っぽい。

しかし正義感に燃える五代刑事は過去の事件に身体を張って飛び込んで行きます。五代刑事自身は体格のいい、訓練された身体能力なのですが、転移してしまうと転移先の人物なりの体力しかない。そこがまた縛り条件になり、物語に幅を与えるのでした。以下、五代刑事の転移先。

【村上ハルカ】17歳。1995年の「兵庫・乳房切除連続殺人事件」の被害者。
【日野翔太】9歳。2009年の埼玉「彩門病院連続ベクロニウム中毒死事件」の被害者。
【高杉裕也】24歳。2011年の「練馬区連続殺人事件」の犯人の高校時代の教師。
【清川麻紗】18歳。大学生。2004年の「祝波島41人殺し」の被害者。
【星名聖良】6歳。1996年の「大田区一家殺人事件」の被害者。

とりあえず5名の転移先人物を挙げてみました。なんとなく雰囲気が伝わるでしょうか?五代刑事が転移してから救える命がある一方で、救いきれない犠牲者も容赦なく出ます。冤罪も明らかになったり、陰鬱さが拭えません。それに過去に亡くなった人物が生き残ることで(それも数十人)未来にどんな影響が出るか謎のまま。

実は五代刑事自身も妹ひとりを残して、それ以外の家族が犠牲となった「杉並区一家4人肉塊殺人事件」の遺族でもあります。どの事件も陰湿で凄惨な内容ですが、五代刑事の熱量でぐいぐいと導かれます。事件の裏にもまだ謎が残り、巨悪の気配。先が楽しみです。
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