ゲレンデマジック101号
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ゲレンデマジック101号

日暮くれ

描かれていないという魅力

ネタバレ
2025年9月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ ここ半年ほど読んだ中で、一番ぐっときて面白かった作品です。

「愛だなんて言わないから」では、描かれていない話があるところが魅力だった先生ですが、こちらでは描かれていない心情がカギになっています。物語は小豆の視点から語られることが多く、真澄が描かれる時も真澄の気持ちはほとんど説明されません。

でも読み進め、また読み返すうちに、ふとした表情、仕草(まだ長い煙草を消す意味を他の方のレビューで気づかされた時は唸りました!)、すぐには読み取れない言葉の意味がわかってきます。ゲイである真澄が、その奔放なキャラクターとは裏腹に、深い諦めとともに生きていること、友人である小豆が決して自分を好きになったりしない(ノンケであり、また恋愛をまだちゃんと理解していないから)と確信していること、そしてその奥に隠されている、傷つきたくないという彼には相応しくないような弱さが見えてくると、もう真澄から目が離せなくなります。(めちゃくちゃかっこいいし!)

「付き合う?」「いや いーわ」のやりとり、小豆の決死の告白に硬い殻を突き破られたような一瞬の真澄の表情、最後にこちらの心を撃ち抜くような101号室で見せた真澄の幸せに満ちた笑顔。小豆も可愛いけど真澄のわかりにくい愛おしさが最高でした!真澄の初恋の話がすごく面白そうでぜひ続編で読みたいけど、この欠落があるのにそれがまた魅力であるところがこの先生の面白さなのかもしれないなと思ったりもします。

できれば丁寧に読んで欲しい、私の中では忘れられない大好きな作品でした!
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