ホワイトライアー【単行本版】
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ホワイトライアー【単行本版】

芹澤知

遊びの関係の裏に秘められた真実

ネタバレ
2025年9月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ ただの遊びの関係のはずが…その裏に秘められた真実に胸打たれました。

芹澤先生が折り返しで「最後まで読んだら、また冒頭から読んで頂けると嬉しいです。きっと味が変わります」と仰っている通り、ページをめくるうち、建前の裏に隠された本音が浮かび上がってきて、結末は最初とまったく違う味わいになっている作品です。

憑依型の人気俳優大河と美容師慧は、出会ってすぐ遊びの関係に。
慧は今まで何度も恋人に裏切られた経験から人間不信になり、まともな恋愛ができなくなっていました。
一方、大河は憑依型俳優であるがゆえ、撮影が終わっても役が抜けきらないことに悩んでおり、「自分を取り戻すための縁」を求めていました。

そんな二人の関係は徐々にただの遊びとは呼べないくらいの熱を帯びるようになりますが、慧は「恋愛」に発展することで再び傷ついてしまうのではと恐れるあまり、俳優である大河が恋愛めいた「演技」をしているのではないかと疑心暗鬼になります。
しかし、大河が演技していたのは逆に割り切った関係の方であり、そこには秘められた慧への想いがあったのでした。

簡単に始まったように見えた二人の関係の裏に、実は大きな運命の出会いが隠されており、それが明らかになっていく中盤は大きな見どころです。

さらに、そこから一気に発展するかに見えて、二転三転していく二人の切ない関係性がたまりません。

大河は慧を過去のトラウマや挫折から救い、慧は大河が俳優となる切っ掛けを与え「自分を取り戻すための縁」にもなる…運命的な二人の絆を見届けた後は、また最初から読み返したくなること間違いなしです。

「ホワイトライアー」とは、直訳すれば「罪のない嘘をつく人」「優しい嘘つき」という感じでしょうか。
大河の「優しく綺麗な嘘」によって、慧は再び前を向くことができ、二人で共に人生を歩き出す…本作品の読了後に見えたのは、あまりにも美しい景色なのでした。

個人的には、最後の章「レッドカーペット」の二人のラブシーンと、大河のイケメンぶりが最高でした!

芹澤先生の作品は展開が早いものも多いですが、こちらの作品は二人の心理描写が丁寧に描かれているので、また違った先生の魅力を堪能することができます。
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