いちばん近くて深いトコ
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いちばん近くて深いトコ

衿先はとじ

幼馴染で兄弟で親友、そして同志

ネタバレ
2025年9月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 養護施設で育ち、今はそこで園長を補佐し保育士として働いている矢坂悠馬には、同じ施設で育った2つ年上の健司という幼馴染がいます。二人の関係は一言では言えないほど深く、幼くして他人の中で暮らしてきたことに加えて、一度は里親に引き取られたものの実子が誕生してまた施設に戻ってきた悠馬を支えるために、健司は定職もなくフラフラしているフリをしています。本当は、やはり同じ施設出身の香川洋一とIT会社を立ち上げ社長をしているのでした。悠馬がいないと何もできないダメなヤツという嘘がバレた時、悠馬は健司を解放しなくてはと決意し、健司は悠馬が離れていってしまう不安に落ち込みます。嘘がバレる前から身体の関係はあったので、お互いが本音で向き合うことで余計なものが全て吹っ切れて「恋人」になれたのかもしれません。共依存とは、自分に自信が無く他者から認められることでしか満足を得られないために、相手の好意をコントロールしようと自己犠牲的な献身を強迫的に行う傾向のことです。結果として相手との関係から抜け出せなくなるわけですが、恋する相手に自分と同じように思ってもらいたくなるのはごく自然な感情なので、恋愛と共依存は非常に近い存在です。不幸な幼少期、施設、幼馴染などの背景を配して、そのグレーゾーンを上手に切り取った作品でした。
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