このレビューはネタバレを含みます▼
子供が発達検査でグレーと言われてから、全く知らなかった特性の事を色々調べ、困難に感じる育児をしている身としては、始めはこの作品を知っていても読むのを避けていました。フィクションとして楽しめないと思って。ですが沢山の良いレビューに背中押され読み始め、自分の想像していたストーリーではなくて、小林君と宇野くんとの出逢いから機微に触れる様々な出来事を通して変わろうとする2人の青年を優しく描いている作品でした。そして、何も自分は分かっていなくて、心が痛いです。普通という自分の中にある概念に知らぬ間に当てはめようと、当事者の本当の気持ちを無視していたと気付かされました。そして言葉の暴力も。自分も子供に対して「なんで?なんで分からないの?」と小林君が恐怖に感じていたと吐露する言葉を何度も言っていました。
小林君が恐怖や不安になると暴力が出てしまうというのも凄く納得です。
井ノ上先生の押し付けがましくないやんわりしたアシストや言葉も心に刺さります。
良かれと思ってしていた自分の行動は全ての人にとって最善とは限らないという当たり前の事を教えられ、そして自分も小林君や宇野くんと何かしら重なるところがあったかもと、全くの他人事ではないと思い知るのです。
この作品はこの先もずっと時々読み返し、自分にとって
我が子とこの宇宙を歩くためのテザーとなりそうです。