モノノ怪 のっぺらぼう
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モノノ怪 のっぺらぼう

蜷川ヤエコ/~モノノ怪~製作委員会アニメ「のっぺらぼう」より

モノノ怪シリーズ コミカライズ第5弾

ネタバレ
2025年9月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ モノノ怪シリーズは事実を詳細に描くわけじゃなく、美しい絵柄と演出で「察してください」と匂わせてくる作品だなと思います。ハッキリしないところが多いけれど、そこが魅力でもあります。
蝶さんに恋したのっぺらぼうにとって、一家惨殺は彼女と一緒になるための手段に過ぎず、無邪気に喜ぶ姿はあどけなくて、真性の悪とは思えませんでした。一方で蝶さんは、大好きな母親を喜ばせたくて自分を殺し続けた結果、自分を見失い、知らぬ間にモノノ怪に憑りつかれていた。最悪の事態に陥る前に、何故逃げなかったのかと薬売りに問われていましたが、彼女が逃げなかった気持ちは良く分かります。時代的な背景もあるけれど、現代であっても、何より大事なものを失わないために自分を殺す選択をしてしまう事ってあると思います。薬売りとの問答の末、蝶さんは必死になってしがみついていたものを手放すことができ、納得した上で薬売りの男に斬られることができて良かったです。ラストは蝶さんの存在そのものが消えていて不思議でしたが、切なさの中に温かさを感じる素敵なお話でした。
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