悪夢令嬢は一家滅亡の夢を見た ~私の目的は生き延びることです~
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悪夢令嬢は一家滅亡の夢を見た ~私の目的は生き延びることです~

近衛悠/大菊小菊/泉乃せん

この涙をファリティナと彼女の弟妹に捧ぐ。

ネタバレ
2025年9月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 涙無しには読めません!陰鬱とした不穏な雰囲気。終始緊張感を強いられる展開。それを端的に表現したゴツゴツとした稜線で描かれる絵。それは巻を追う毎に激しくなって行く。何度も物語の中で言われた科白。「一体彼女が何をしたと言うのだ。」と。涙を流しながら思わずにはいられません!公爵令嬢であるのに、謂れの無い罪に問われ、死罪確定の牢獄に収監され、父公爵亡き後、代理となった継母は何もせず。嫡男である弟の必死の嘆願も無視されて。婚約破棄したからと言って王家は何もしない。物語途中で自らの間違いに気付いたという王子ですら、ファリティナを釈放出来ない。どんな大きな力が彼女を殺そうとしているのか。収監されている間に彼女は愛し慈しんでいた腹違いの(後に種違いである事も明かされる)幼ない末弟の死に目にも会えず、慟哭する事も出来ずに打ちのめされる。そんな中、継母は情夫に唆されて鉄鋼の横流しをして。それが敵国への武器支援になっていて。諸々国家反逆と捉えられる罪を犯す。それを嫡男であるセリオンに暴かれ、継母は八つ当たりでファリティナの目を潰す。セリオンは最初こそ、暗い雰囲気のファリティナを避けていたが、彼女の真心に触れて、後に味方となって行く。4巻での、縁戚である伯爵家へ事件の発端になった男爵令嬢を養女に入れ、「お前の欲しがっていた女をつけてやったぞ。」と王子に嫌がらせで申し渡す所では、ほんの少しだけ胸がすく思いをしました。王子は焦りますが。この婚約はそもそも王家とグランキエース家の政略であったのだから、とセリオンは言い切るが、彼は愛する姉を王家にも何処にも差し出す気は全く無い。そして。今頃になってファリティナに赦しを乞いたい王子にとっては小さなザマァでもあるのです。けれど鬼才と称えられるセリオンもまだ15歳。彼等には頼れる大人が居ない。4巻になって。ようやく父公爵の亡き先妻、ファリティナの実母の実家である疎遠になっていた祖父母が手を差し伸べる。彼等は救いとなるのか。セリオンが思慕する姉への距離が近過ぎるというので、祖父が気を揉んでいるのがクスッと笑えて、この陰鬱な物語をホッとさせてくれる。どうか。ファリティナが望む様に静かに過ごせます様に。どうか。この政争を牛耳られるくらいにセリオンが成功して、ファリティナと静かに暮らせます様に。願わずにはいられません!
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