このレビューはネタバレを含みます▼
最初に読んだときはあまりに衝撃が大きくて、
2度目はにいちゃんがかわいそうで、
3度目はゆいが幸せになったらいいのにとずっと考えてた
そんな作品、今回4度目です
私は長い間まいこの気持ちがわからなかったんだけど、読み直してたら少しだけわかったことがあって、
加害者の家族からの視点だと、被害者もまた敵になるんだね
忌まわしい事件の関係者、私を不幸にした人間のうちの一人、きっとまいこにとってのはにいちゃんはそれ以上でもそれ以下でもない
だからゆいがにいちゃんに向けるような哀れみの目を一切向けない
これはにいちゃんの両親も多分同じで、自分の息子は被害者なのに、両親にとっては自分の人生を壊した加害者みたいな感じなんだろうな
両親の気持ち的には「この子がこんな犯罪に巻き込まれたばっかりに私たちは不幸にさせられた」なんだと思うし、それは事実でもある
犯罪は法で裁けるけど、人の心は『自分がどう感じたか』が判断基準だから、その事件によって誰がどう傷つきどう歪んだかはもう未知数。
そして自分がつけられた傷を癒すためなら、その事件ごと無かったことになるくらい息子に全部やり直させたい、というのはあるのかもしれない
悲しいです
人の心は悲しい
そんな敵しかいないような世界で2人だけで手を取り合って生きていくには、世界はあまりにも怖くて、暗くて、恐ろしい場所で、
きっと2人にできることは、
傷を癒して、誰かにえぐられて、また癒して、えぐられて、を繰り返すことだけ
だからにいちゃんは、ゆいじゃない他人に認めてもらいたくてたまらないんだろうな
本作は匂わせる感じのラストでしたが
正直に言うと私はバッドエンドを見届けたかった
あまりにも自分本位な考えだけど、
2人はもう苦しまなくてもいいし、悲しい思いもしないし、傷つける人も、傷ついた過去も無かったことになる世界に行かれたね、という安心感が欲しかったんです
でもはらだ先生はそうはしない
傷ついても、苦しくても、薬に頼りながらでも、2人は生きていくしかないと言うことなんだと思います
この先やっぱりだめになるかもしれないけど、だめにならないかもしれない
2人の世界の神様は、そういう曖昧なところで2人の話の幕を引いた
だからきっと、きっといつか、ふと生きててよかったと思う日が来る
そんなほんの小さな期待をして、今はこの本を閉じることにします