俺はお前の愛で痛い【単行本版】
」のレビュー

俺はお前の愛で痛い【単行本版】

南あらた

あまりにももったいない

ネタバレ
2025年10月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ ヤクザの用心棒×売れない売り専のカップリングです。
ランキングに入っていたこと、高評価だったことを踏まえて読みましたが、確かにいい話だし絵も綺麗なのに全てがあまりにも展開が早く、もったいなさ過ぎました。

ストーリーとしては孤独を抱えたふたりが交流し、愛が芽生えてもその後組の抗争や当て馬の若頭によってかなりバイオレンスな事件を乗り越えながらも最後はハッピーで幸せで、お話としてはしっかりしてるし読後感も非常に良く、いい作品だと思います。

ただ展開が早すぎる。この内容をきちんと描くなら、3巻分くらいにはせめて分けた方が。
いきなり攻めが受けを気に入ったかと思えば受けも直ぐに攻めが好きになり、すぐに告白。物語の3/1程度のところで既に心から愛してるみたいな関係値にまでなり、その後若頭の刺客みたいなのが襲ってきたと思ったら数ページ後には今度は攻めが攫われる。いきなり受けが乗り込んできたと思ったら愛の大告白、そして警察がきて別れ…?
いや、あまりにも早すぎて…情緒が無いです。
受け、攻め、そして若頭の過去のエピソードを入れ込み、且つ色んな事件や出来事をこれでもかとどんどん展開するおかげで、人としての心情の変化や悩むシーンがほぼ無いんです。それが良くない。

どういう所に惹かれて、何に悩んだのか。普段の交流、会話の間合い、事件の間に起きた心情の変化や何をしたか、その辺が描写が足りなすぎるんです。
たとえば受けがバイクで乗り込むシーン。ここにバイクを調達したり、焦って、でも早く攻めのところに行かなくちゃみたいな心情描写、そういうのが必要では無いですか?
もっと2人と当て馬の若頭の人間性、心の機微を描いて欲しかった。過去のエピソードだけで「こういう人間です」と語るのは情緒に欠けます。

多分高評価だったのでかなりハードルが上がってしまったので辛口に書きましたが、展開の速さが気にならない人もいると思いますので、とりあえずおすすめはします。
私自身はあまり満足できる作品ではありませんでした。話の筋やキャラクターや絵柄は好きです。
いいねしたユーザ18人
レビューをシェアしよう!