このレビューはネタバレを含みます▼
最高です!!!!
違う作家さんの作品に言及しててちょっと申し訳ないのですが、潤也(本作品攻め)『体感予報』の攻めっぽさがあります。
モラハラ気質なのに、不器用さを理解すれば憎めないような…相手(受け)が、攻めをなんだかんだ受け止められてしまう包容力のあるやさしい人なのが似ています。しかもどちらも、攻めの生育歴がトラウマ的なのも含め…攻めを責めきれないのはここにありますね。そして、潤也も啓司(本作品受け)に独占欲を露わにしたあと、「いや違う…別に他の人とも仲良くしていいし何食べてもいいし…」と伝える感じが、完全モラハラではなく相手のことも考えようとしていていいです。
執着も独占欲もない何もかも健康な関係性だけが、親密さだけではないんだよな、と思わせてくれるいい作品です。相手が自分を愛してくれていること、大切にしてくれていることが理屈ではわかってても、感覚的にはピンときていない啓司の自己肯定感の低さとか、クィアとして人の目にどう映るか恐い気持ちも。潤也の、独占したい気持ちと縛りたくない気持ちどっちもあって、でも相手が素直だから意地悪して自分の手の中におさめたままにしようとするところとか。人間的な複層的な感情に共感できるところがたくさんあって、作者さんの力量でそれらがすごく繊細に表現されているのが、感情移入できてすごく面白かったです。
SMの観点的にも好きな人はまじで刺さるはず…!啓司はあまり自覚なさそうな?かなりMで、お仕置きされることに快感を覚えてもいます。(自己肯定感が低いせいで、自分に怒っているは自分に集中してくれるから無自覚に怒らせようとしていた、ということに、情緒的成長のなかで気づいていきます)
潤也も相当なSですよね(笑)でも、ストーリー性より性描写が重視されるアホエロっぽさはあまりなくて、ストーリーのなかで変動する心理がちゃんと性描写に関係していて、その時その時でセ.ックスの嗜好が変わっているのが本当にこの作品の深みを出してるなあ〜と思います。エイズ期のクィア危機などへの言及もあり、クィア当事者としても読むのすごく楽しかったし、「パートナーシップ制度に申請しないと」みたいな発言からも、よく調べられていたり、クィアの物語が消費だけされていたりする感覚でなく、尊重もちゃんとされていると感じました。なので読んでいて心地がいい部分が多くてよかったです。