ルームメイト
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ルームメイト

佐藤アキヒト

心の弾力を呼び覚ましてくれる名作

ネタバレ
2025年10月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ まずは、このような素晴らしい作品を生み出してくださったアキヒト先生に心からの感謝を捧げたく。
パブリックスクールという陰影ある閉ざされた環境と、先生ならではの極めてデッサン力の高い美麗な絵がこの上なくぴったりで、BL黎明期の数多の名作を彷彿とさせる上質な世界観が燻り立ちます。

最小限に絞ったテキスト、コマ割り、間合い、しぐさや表情のフォーカス、アングルから背景…
全編に通底するリリカルな美しさからしっとりと匂い立つ色気…
そうしたすべてがノアとカイの、お互いを意識するがゆえの感情の揺れ動き、心の距離感をじんわりとあますところなく伝えてきて、読む側の心の弾力を呼び覚ましてくれます。
アキヒト先生の神域画力・表現力にただただ脱帽、拍手喝采です…本当にありがとうございます(感涙)。

しかし、あまりのトンビに油揚げ的な幕切れに、叫びながらダッシュで校庭10周に飛び出す勢いなんですが…
こ、こんなところで待て次号?!そそそんな……いやぁああああ無理!!!

「じゃあ、また期待するわ」。捕食者猛禽類全開の色気MAXなカイに当てられ、あやうく心臓麻痺で高みに上がるかと。
小鳥ちゃんノア、ダメ逃げて喰われるよ…!という叫びと、カイいいぞもっとやれ!という叫びの板挟みにあってつらい。もう隠蔽の神様の護符を握りしめて姿をくらまし空気と化し、この美しく繊細な2人を見守ってけしかけてよろこびたい。

カイよ、気持ちはわかるよノア愛おしいもんね、だからって不用意に触りすぎ!距離感バグってるから!!いいぞもっとやれ!!!!(あの長い手指はチートウェポン。特に小鳥を手渡す名シーンではその威力を遺憾なく発揮。劇薬注意)

……と、こんな具合に妄想がはかどる側面も盛り沢山です(けっして作品を冒涜する思いからではなく)。

1巻はノア目線で進行しますが、対するカイも言葉少なにもかかわらず、目線や挙動からノアに対する想いの熱量がありありとにじみ出ていて、この、なかなか導線が繋がらないじれったさがとにかく最高なんですわ…。くっ…なんといふ憎い演出でせう。こんなもどかしいは正義…!

待つ楽しみと苦しみ、悶絶のせめぎ合いが続きものの醍醐味、多感な彼らの前途に待ち受けるあれやこれやをじっくり味わいたいので、物語が長く続きますよう、アキヒト先生のご手腕を頼み、ご健勝を切にお祈りする次第です。
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