このレビューはネタバレを含みます▼
先生初のナンバリング作品とのことですが、先生の丁寧な心理描写が余すことなく発揮されており、結末の鮮やかで見事な着地点は素晴らしいの一言です!
お話としての面白さはもちろん、青春のドキドキとキラキラ、主人公2人の美しいと可愛いのバランス、多幸感溢れる結末、さらに純愛&初々しいラブシーンと、もう青春ものBLとしては完璧すぎて満足度が半端ないです。
長く伸ばした髪で顔を隠し、人との関りを避ける唄川。
お気に入りの歌い手「ハイト」の更新が止まり、日常に退屈を感じていた奏多。
そんな2人が出会い、音楽をきっかけとして徐々に距離を縮めていきます。
唄川はなぜ人前で歌うことができないのか、その理由が明らかになるにつれ、2人の関係も少しずつ変化していきます。
思春期特有の心の揺らぎや、相手に対する想いの変化が、とても丁寧に描かれているので、2人に感情移入してしまい、読んでいる間ずっとドキドキが止まりません。
唄川が抱えていた過去のトラウマは奏多によって癒やされていき、奏多は唄川によって退屈だった日常が煌めいたものになっていきます。
奏多が奏でるメロディに注がれる唄川の声。
音楽を通した2人の関係と恋人としての関係が大きく交わったとき、多幸感溢れる感動的な大団円を迎えます。
ハッピーエンドに至るまでの二人を支えた滝や井波・須藤、そして可愛すぎる斗真など、魅力的なキャラの多さも、一つ一つの場面を丁寧に描かれる宮田先生ならではですね。
宮田先生が紡ぎだす言葉もとても素敵で、「初めて知った恋の感覚は やわくて まるくて あまい」と思っていた奏多が、初めてやきもちを焼くシーンで「さっきまでやわくてまるかったものが なんかちょっとだけ …マシュマロが粘土になったみたいだ」と、奏多の揺れる感情を透明感ある瑞々しい言葉で表現されているんです。
2人初めての共作となった『pouring into you』には、表題の「君に注ぐ」という意味と共に「君に夢中になる」とか「君に入り込む」という意味もあり、2人が互いへの想いを音楽に注ぎ込み、互いに恋人として夢中になり、そして◯◯が◯◯に物理的に入り込む(下ネタでスミマセン)という多重構造の解釈もできて、とても奥深いなあと感嘆します。
ラブシーンもしっかり描かれていて、BLとしての満足度も非常に高いことを最後に強調しておきます!笑