恋する暴君
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恋する暴君

高永ひなこ

3歩進んで2歩下がる

ネタバレ
2025年11月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ ホモが大嫌いで凶悪強暴な先輩に4年も片想いを続ける大学生が、千載一遇のチャンスを利用して先輩と一線を越えたことをきっかけに恋人になろうと努力するお話。
何かの続きものなのかなと思わせるストーリーの始まりでビックリしましたが、「チャレンジャーズ」という先輩の弟が主人公だったお話が先にあるようです。なので、森永の長い片想いの始まりは不明でしたが、距離を少しずつ縮めようとする過程が描かれています。
猪突猛進な森永と、暴力と暴言で真っ向拒否の先輩。こんなに拒絶を公言している人は初めてでした。ただ、拒絶はしているものの、森永という人の能力や真面目さ、人としての良さにはちゃんと向き合い、恋愛とは切り離して人付き合いをする先輩の優しさに、彼の真っ直ぐな人柄を感じました。とはいえ、ちょっと近づいたかと思えば、その倍以上の残酷さで反発があるので、森永も良くめげないなぁと呆れるくらいでした。
それでも寄り添って歩もうとする二人の姿には、愛と互いへの深い思いやりが感じられました。恥ずかしがり屋で天の邪鬼な先輩が、大嫌いだと拒絶する男同士の関係に思い悩みながらも受け入れることへの勇気や、公私ともに先輩に尽くし、先輩の気持ちを取りこぼすことのないようにいつも想像し、絶対的な愛で側にいる森永の一途すぎる想い。本当に少しずつですが、変わっていく関係性にハラハラドキドキさせられました。我慢強さと根負け具合、その絶妙なバランスに多くの人が魅了されると思います。いつかは、先輩の口から「好きだ」と言う言葉が聞ける日を、森永と共にのんびり待ちたいと思います。
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