若い男に恋をするおっさん騎士の話
」のレビュー

若い男に恋をするおっさん騎士の話

伊川伊織/宇良たまじ

なんともいえない読後感あり

ネタバレ
2025年11月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ ふわふわおじさんだけど、フワフワしている理由が話中で明かされたとき、あぁ…あぁぁ……。泣ける。
私は最期までもどかしいなあと思ったまま読了しました。
一般的な理性や、論理や、社会性といった社会生活の軸としての考え方を基準に持てないがゆえ、
他の人と同じステージでは生きられずにいるのに、自分を枠外に置くことに疑問を抱くこともない。
人の悪意や評価を、理解することができないからこそ悲惨な戦場を経験していても純粋なまま生きられる。
けれど、同時に他者の愛情や慈しみすら自分に向けられていることに無頓着にしかなれない。
ただただ、自分の大切なものを大切にし続け、それを宝物のようにずっと抱きしめ続けるのに、
相手にとって良かれと思えば愛はそのままに手放すことにも躊躇がない。
周りにいる人にとっては、この人こそ守られなければならないというように影響していく。
私でもこのおじ守らないと……と思った。
BLというジャンルではありますが、無為な戦争、意味のある戦争もあるでしょうが、
守り切った王様が笑顔でいてくれることが、何よりうれしいんだと、死んでった仲間たちも、
王様が笑顔でいれるようにがんばったんだからという捉え方、本当に泣きました。
この人は、王様が愚王でも賢王でも同じなんだろうなあ。
いつか、命令や本能であっても、自分を傷つけることを躊躇えるようになってくれたらなと思います。

話的にはわりとコメディ要素もある気がするけど、私はけっこう重く響いた作品でしたね。
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