永遠の昨日
」のレビュー

永遠の昨日

榎田尤利

『一番』、が永遠であって欲しい

ネタバレ
2025年11月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ ずっと読みたくて、でも読めなかったけど、読んで期待を裏切られなくてよかった。
期待、と言うのもおかしいけど、この物語が『死』にまつわる事は分かっていたし、それを知った上でのタイトルならば、この中の登場人物は幸せになれるのか?という疑問と不安がずっとあって読むのが躊躇われていたけれど、表紙や美しさや最近読んだ作者さんの他作品の良さに後押しされてあたためていた本棚から取り出しました。

と、ここまでどうでもいい所感なんですが、結果読んで、不安は払拭され、何度も嗚咽が止まらなくなるほど切ないいいお話しでした。
私の懸念はただ一点、本当に永遠に好きでいられるのか?だったのですが、最後まで、残された満は浩一を好きなままでいてくれた事。
死んでしまった後に、他の好きな人と幸せに、なんてことになったら、いやそれはそれで幸せなことなんだけど、私の中のBLでは2人は唯一無二の存在であって欲しいので、そこが裏切られなかったので、安心したし読後の満足感も大きくて、それまでの2人の中の「一番好き」が更に胸に迫りました。「一番」の意味や重みも後からじわじわと苦しくなって、読み終わったのにまた、慟哭しちゃう、という…。だから『永遠の昨日』のタイトルも裏切られず納得のいく結末でした。

なにより、満のお父さんからの、母親のエピソードがこのお話の重要なところだと思うのですが、一番大切な浩一を喪って初めて、母親がどれほど自分を大切に思っていたかを知るところは、これまでの孤独だった満を父と母の家族のあたたかさで包み込み、それでももう永遠に、母も、浩一もいない世界。でもそこには、それまでとは違う父がいて、同じ体験をした一番の理解者であり同じく愛する者を喪った痛みもまた分かち合える唯一の肉親。少し現実離れしているけれど、これがあるからこそこの物語が深く、救いがあるのだと思います。
誰よりも大切な人とのお別れのための一週間の中で、残された者と残していく者の無念な気持ちを昇華させていく物語に、『永遠の昨日』は、ずっと満の中であり続けて、これからもそうなのだろうと思わせてくれたラストに感謝しました。ぜひ読んでいただけたらと思います。
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