こまどりは、夜の帳[コミックス版]
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こまどりは、夜の帳[コミックス版]

露久ふみ

何度でも読み返したくなる名作

ネタバレ
2025年12月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 紀人の言動によって封じ込めていた感情を引き出されていく慶臣と、それに相対する事で自身の中に今まで知らなかった感情を呼び起こされていく紀人。その過程が豊かな画的表現と必要十分なセリフで描出されていて、とても胸に迫ります。
ポーカーフェイスで思考を介さない言動をしない紀人が、慶臣に対してだけ見せる感情の起伏や衝動的な行動。その積み重ねによって物語られる紀人の心情を思うともう…!
里江の所業は絶対に許せませんが、紀人と里江の間に繰り広げられるアイロニックな舌戦はすごくツボでした。
彼女の言葉は丁寧なようでいて、真綿で首を絞めるように慶臣と三輪の二人の行動を確実に縛り付けていてゾクリとさせられます。
一方で、本筋のヒリつきを和らげてくれる慎仁のコミカルなキャラクターと、紀人との関係性がとても良かったです。地元署のバディの存在も紀人の人物像に奥行きを感じさせてくれました。とくに老刑事さんいい味出てた。
紀人の言う「法」によって裁かれ得ない罪(の意識)を抱えさせられた三輪には、きっとまだ時間が必要なんでしょうね。それも含め続きを見たくなる余韻を残しつつ、ほんのり明るい未来を予感させる終幕が最高に美しい…大好きです!

嬉し過ぎる続編。
不穏な夢から始まる第一話に、ドキドキしながらページを捲りました。
登場人物たちの関係の深まりが感じられる穏やかな日常パートが尊いです。とくに病室での会話は微笑ましい。
事件に巻き込まれた三輪を探す過程で、焦る慶臣と捜査のために連絡の取れない紀人の間にはすれ違いも生じますが、その中で紀人が見せる感情の揺らぎは必見です!
他人に期待を寄せすぎないからこそ身軽そうであった紀人が、慶臣には自分を信じてほしいし求めてほしいのね…。
下巻で主犯が慶臣に突きつける言葉にはかなり心を抉られましたが、三輪が目覚めるためには避けては通れない要素でもある。慶臣の決意が三輪を現し世へと引き戻し、慎仁が見せた誠実さと温かさが三輪に過去を抱えて生きていく勇気を与えた。そして慶臣の真意を聞いて、紀人もまた自分の感情をそのままに受容することができたのかなと思いました。4人がそれぞれに見せた覚悟に胸がいっぱいです。
今作ではお父様との関係も掘り下げられていて、紀人への理解が深まった感がありました。慶臣の前では要領の良い自分ではいられない紀人がもはや可愛らしい。
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